2016年8月11〜18日、夏休み(+1日有休)まるまる中国の深圳と香港に滞在してきました。

このうち15〜17日、チームラボ高須さんと現地企業の協力で行われている「ニコ技深圳観察会(英語ではShenzhen High Tour)」に参加してきました。

この観察会は、最近「ハードウェアのシリコンバレー」と言われたり「秋葉原を30倍にしたような電気街がある」と言われたりしている深圳にて、「現地集合解散、参加者がみんなネットに感想を公開することを前提にしている形の大人の社会科見学」です。

詳細は高須さんの本、まとめページをご覧いただくといいです。
『メイカーズのエコシステム 新しいモノづくりがとまらない。』(NextPublishing) 高須 正和 (Amazon)
ニコ技深圳観察会 まとめ (ポータル)

というわけで、レポート書いていきます!
今回は深圳という街がなぜものづくり界隈で注目されているのかの説明や、自分自身のツアー参加のきっかけを書いていきます。

実際に訪問した場所の具体的な説明はまた別記事で書きますので、具体的な内容が知りたい方はそちらをご覧ください。

 

深圳のなにがすごいの?

深圳は日本語読みで「シンセン」、中国語読みで「シェンジェン(Shenzhen)」という名前の、香港のとなりにある街です。

海に面している&(先に発展していた)香港のとなりという地の利を活かして、鄧小平が1980年代に経済特区に指定、そこから急速に発展してきた都市です。

日本だと、大手製造メーカーの工場がたくさんある、というイメージが強いかと思います。
もちろんそうした面も現在進行形だと思いますが、最近この深圳が注目されているのは、「ただの工場たくさんエリアだと思ってたのに、イノベーションの中心になってるっぽい」からです。

seeedMakeblockDJIといったメイカー(趣味でものをつくる人や、それが高じて仕事になってしまったような人)たちに人気な若い会社や、
世界で最初かつ最大のハードウェアアクセラレータ(ベンチャー企業のビジネスを後押しする組織)HAX
がこの街にそろっています。

また、それらの「有名どころ」の周りには、無数の加工会社、アセンブリ工場、試験の受託会社、卸売業者などによって、世界一(らしい)のサプライチェーンがかたちづくられています。

ちょっと郊外?の街なかで見つけた加工屋さん。(緑の布には「栄養 朝食 ミルクティー デザート」と書いてあるが、それらが販売されているようには見えない)

 

深圳は、設計し、材料を集め、加工し、組み立て、試験を行い、売る。というものづくりの一連の流れを世界で最もすばやく行える場所になっていて、世界中の「ものをつくりたい人」がこの場所をめざして来るという状況が生まれています。

さらに、この状況に目をつけた中国政府(深圳市政府?)が、この街にベンチャーインキュベーション施設や、複数のデザインハウスで一棟まるごと埋め尽くされているビルなんかをバンバンつくったりしていて、深圳のものづくりのプレーヤーはどんどん増えているようです。
(デザインハウス:デザインのアウトソーシングを請け負ったりする会社。日本の「デザイン事務所」とは少し雰囲気が変わるんじゃないかと思います。)

今回訪問させていただいたデザインハウス inDare
「一棟まるごとデザインハウスビル」Sino-Finnish Design Parkに入居している。このビルは、その名のとおりフィンランド政府(?)も協賛してつくったみたいです。

 

こうしたものづくりに関わる組織や人間がかかわり合ってつくりだされているのが、上記高須さんの本のタイトルでもある「メイカーズのエコシステム」です。

生き物のエコシステム(生態系)のように、それぞれがそれぞれの仕事をすることで、全体としてものづくりの流れが生まれています。

このエコシステムを実際に現地で見聞きするというのが、このツアーなのです。

エコシステムといえば、seeedで会社の説明をしてくれたShuyangさんが以下のようなことを言っていたのが印象的でした。

「(seeedに競合はいるのか?という参加者の方からの質問に対して)いるかもしれないけれど、気にしていない。ひとつのケーキを取り合うんじゃなく、そのケーキを大きくするために協力するべき。」

深圳のものづくりのプレーヤーたちは、みんなでこのエコシステムを育てていこうという意識を持って仕事をしているんだろうなぁと感じられるご回答でした。

 

 

ちょっと待って、日本でも同じことができるんじゃないか?

一方で、浜松(浜松町じゃないよ)で製造業に携わっている自分からすると、浜松でも、家や会社から車で行ける範囲に各種販者さんも加工屋さんも製品組み立ててくれる会社もあるし、工業技術センター的な施設に行けばちゃんとした試験機も貸してもらえる。浜松でも同じことができるんじゃないか?とも感じます。
日本の他の工業地帯に住んでいる方も同じように思うかもしれません。

ただし、こんなふうに感じるのは自分が“ちゃんとした”会社に所属してものづくりをしているからなのかもしれないとも思いました。
10年、20年の取り引きがあって、ある程度のロット数が見込めるからなのかもしれません。

よし!会社を建ててものづくりベンチャーをやろう!と思った人がいたときに、浜松のエコシステムはそれを受け入れられるでしょうか?

もっと言えば、ビジネスではなく趣味でものづくりをしているメイカーを受け入れられるでしょうか?

これは加工屋さんや工場の人たちの気持ちの問題というよりは、seeedHAXのような、ものづくりベンチャーと加工屋さん・工場とのあいだの橋渡し的存在がそのエコシステムのなかにいるのかいないのかという問題な気がします。

海外のものづくりベンチャーが深圳にやってきて、そこで自分たちのつくりたいものをつくってくれる取引先を見つけるのは、もちろんとても大変なことだと思います。
しかし、そこにseeedHAX、また次の投稿で書くJENESISが入って、よい取引先を見つけるサポートをしてくれる。
そういった環境が、おそらく世界でもっとも整っているのが深圳なのだと思います。

なので、浜松もハード的な要素は揃っているのでしょうが、ソフト的な要素において深圳はやはり優れているのだと言えます。

ちなみにこれはあくまでちらっと深圳に行った(かつ、浜松もまだ3年目の)自分の感想なので、「いやいやハード的にも深圳はあなたが思っているよりもっともっとすごいよ」という意見もあるかもしれません。
このあたりは高須さんの本JENESIS 藤岡さんの章を読むのがおすすめです。

また、日本だと板金屋さんの海内工業などがメイカー向けのビジネスをやっています。
seeedHAXのような“メイカー向け”企業ではなく、加工屋さんが自ら、ものづくりベンチャー・メイカーとの橋渡しの役割を担ってくれるのが日本式になってくるのかもしれません。

 

 

なぜ参加?

どうでもいいかもしれませんが、参加のきっかけを書きます。自分が書きたいので!

深圳はぼくの、another skyなんですよぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!!!!!

ぼくはいまから6年前の2010年、大学3年の夏の3ヶ月間、深圳の嘉兰图设计(英語名Newplan)という会社でインターンシップを行っていたのです。

ここは上述したようなデザインハウスでして、そこでプロダクトデザインを学ばせていただいていました。

スケッチの描き方やRhinocerosの使い方から始まって、デザインハウスの仕事の進め方をここで教えてもらいました。

たった3ヶ月ではありましたが、中国と日本のデザインのちがいだとか、ちょうど尖閣諸島問題が起きたときだったので政治と歴史の話だとか、いろんなことを考えて、現地の人と話して、すごくいい経験になりました。当時は毎日帰りたがっていましたが。笑(主にいわゆる“海外水まわり事情”によるホームシック)

165160_1749591020889_6939946_n当時のようす

 

このインターンシップのとき、自分はプロダクトデザインをやっていきたいという気持ちだったのですが、このインターンの直前に行った世界を変えるデザイン展、帰国後に読んだヴィクター・パパネックの『生きのびるためのデザイン』、2011年東日本大震災、大学4年から入った田中浩也研(慶應SFC)等々の影響で、興味の対象がデザインからデジタル・ファブリケーションやパーソナル・ファブリケーションといった方面にだんだんと移ってきました。

つまりは、自分のつくりたいものを外から中まで自分でつくれるようになりたいという気持ちが湧いてきたのでした。

それから大学で電子工作を学んだり、3Dプリンタ、3D切削機、レーザーカッター等の工作機械の使い方を覚えたりしていろいろ好きなものをつくり、そしていまはその3Dプリンタや3D切削機をつくるメカ屋として働いています(英語と小論文で大学に入ったのに人生なにが起こるかわからない)。

そんなかんじで数年間中国とは縁のない生活をしていたのですが、2年前のある日、会社の休み時間中になんとなくmaker faire関連のページを見ていたら、maker faire 深圳の記事があるじゃないですか。

え、中国でmaker faireやってるの??
で、え、深圳?!
あの深圳?!
上海とか北京じゃなくて、広州でもなくて、深圳?!?!

と、画面を3度見ぐらいしました。

それから調べれば調べるほど、出てくる出てくる「深圳のものづくりがすごい!」という記事。

この記事とか。

David Liは、それは中国的なオープンソースなのだと言っています。カウンターカルチャー的なアイデアによるものではなく、むしろ必要に迫られた製造のためのオープンなアプローチです。

※ それ:山寨(シャンジャイ)のこと。中国ではパクリ商品のことをこのように呼ぶ。

面白すぎて、完全にしびれました。
あのころデザインをやりたいと思っていた人間として、完全に「まちがったもの」としかとらえていなかった山寨を、中国ものづくり界のオープン性の象徴としてとらえている…!!!!!

なにその考え方おもしろすぎーーーーーーーィィィィィィィィィィィイイイイイイイ!!!!!!

これは完全に深圳が自分のことを呼んでいる!

と思いました。

そのあと当然の成り行きでニコ技深圳観察会参加者のブログを見つけ、最初に高須さんにメールしたのが2014年8月。
なかなか会社の休みと合わず、2年経ってやっと念願かなったりというわけでした。

 


当時お世話になった友人たちと夕食

 

ツアー後には6年前すごくよくしてくれた友人たちと再会して、みんなけっこうもうお金を稼いでるんだろうけど、あえてあのころごはんを食べていたローカルな場所に連れていってくれました。

みんな当時深圳大学の学生だったので、深圳大学の近くです。

ガンガン発展していく深圳ですが、この深圳大学のまわりはあんまり変わってなくて、もう懐かしくて懐かしくて…。(友人の話によればこのエリアにも再開発の影が落ちてきているようですが)

今回6年ぶりに深圳に行って、深圳に飛び込んだ6年前の自分に負けないように、自分のつくりたいものをどんどんつくって、自分のやりたいことをどんどんやっていこうと、あらためて思うことができました。

次はMaker Faire深圳に行きたいな〜!

 

ニコ技深圳観察会レポート(2) 動画で綴る深圳ものづくりの現場レポート編 につづく

広告